やっていい応急/やってはいけない作業/切替ライン

雨漏りが発生した場合、最も重要なのは「安全確保」と「二次被害の防止」です。応急処置はあくまで専門業者による本格的な調査・修理までの時間稼ぎであることを理解し、迅速かつ冷静に対応する必要があります。
やっていい応急処置(優先度順)
- 1. 室内側の被害拡大防止:漏れている真下に受け皿(バケツ等)を置き、その周囲に吸水材や養生シートを広げ、濡れたものが広がる「動線」を確保します。
- 2. 漏水箇所の記録:漏水が発生した時間、位置、雨量、風向を詳細に記録します。
- 3. 外部からの一次止水(DIY可能範囲):安全が確保できる範囲(1階や足場不要な箇所)で、防水テープやブルーシートを使い、水の浸入経路の上流側に仮止めします。水の流れに逆らわないことが重要です。
やってはいけない作業(重要なNG集)
NG行為 | 危険性・理由 | 根拠 |
---|---|---|
強風・雨天時の屋根登攀 | 転落・転倒による人身事故の危険性が極めて高い。 | 安全第一の原則 |
縁切り(排水経路)を塞ぐ養生 | 内部に水が溜まり、さらなる被害(構造材の腐朽、シロアリ)を引き起こす。 | 二次防水の基本原則 |
排水口の封殺や清掃不足 | 排水不良により雨水が滞留し、建物の防水保証期間を過ぎた後に雨漏りが発生する原因になる(プールルーフの事例など)。 | フラットルーフの事例 |
濡れた下地へのシーリング厚塗り | 接着不良や内部の湿気が逃げず、防水効果がないばかりか、劣化を促進する。 | シーリング工法の基本 |
アルミテープ直貼りによる外壁塗膜剥離 | 粘着力が強すぎるテープは、剥がす際に外壁の塗膜や下地を傷つける恐れがある。 | DIY材料の選定リスク |
専門業者へ切り替える切替ライン
応急処置は一時的なものです。以下のような状況が一つでも当てはまる場合は、直ちにDIYを中止し、専門業者(瑕疵対応実績のある建築家や専門相談室など)に依頼を切り替えてください。
- ・浸入量が深刻:バケツが短時間で満水になるなど、水の浸入量が極めて多い場合。
- ・再発回数が多い:一度補修しても、短期間に同じ箇所または近くの箇所で雨漏りが再発した場合(根本的な原因が残っている可能性が高い)。
- ・構造的な懸念:梁や柱、基礎、天井裏など、構造体に浸水が及んでいる、またはカビ・腐朽・シロアリ被害(二次被害)が疑われる場合。
- ・高所作業が必要:2階以上の屋根、高所にあるサッシ、足場がなければ到達できない箇所が原因の場合。
安全第一:DIY禁止領域(高所2階以上・強風/雷雨時・電気設備近接・アスベスト・構造劣化)

DIYによる応急処置において、何よりも優先すべきは安全確保です。建物の欠陥を調べる場合も、「ヒヤリ・ハット」を避け、事故を起こさないことが重要です。
高所作業の絶対禁止
屋根の上や2階以上の高所作業は、DIY禁止領域です。
屋根に上がる必要がある場合、点検やメンテナンスが困難な状態になっていることが多く、ハシゴの使用は非常に危険です。急勾配の屋根(6寸勾配以上など)は特に点検・メンテナンスが困難になります。
専門業者であっても、足場を設置せずに親綱を張って安全帯を使用する作業は危険であり、足場を設置すること自体が費用負担になるとしても、安全を優先すべきです。
強風・雷雨時の屋外作業
雨漏りが発生している最中(特に強風や雷雨時)に、屋外に出て原因を特定したり、ブルーシートを設置したりすることは、転落や落雷のリスクがあり絶対に避けてください。応急処置は天候が回復し、安全が確保されてから行うべきです。
電気設備近接箇所と漏電リスク
漏水箇所が電気配線や分電盤の近くにある場合、漏電や火災のリスクが伴います。
室内で水漏れが発生し、天井や壁の濡れが拡大している場合は、直ちに漏電ブレーカー(分電盤の主幹または該当回路)が落ちていないか確認し、感電を防ぐために該当回路の電源を切るか、最悪の場合はメインブレーカーを落としてください。
アスベスト含有建材の取扱い
古い建物の場合、外壁や屋根の一部にアスベスト(石綿)含有建材が使用されている可能性があります。
過去には彩色石綿板と呼ばれる屋根材などに使用されていました。アスベストは肺に吸入すると中皮腫や肺がんを引き起こす危険な物質です。
DIYで穴を開けたり、剥がしたりする作業は、アスベスト繊維を飛散させるリスクがあるため、専門業者(アスベスト対策の資格を持つ業者)に委任しなければなりません。
構造劣化が疑われる場合
雨漏りが長期化し、木材の腐朽やシロアリ被害が進行している場合、建物の基本的な安全性(構造耐力)が損なわれている可能性があります。
特に、天井や壁を剥がした際に木材が黒く変色している、指で押すとへこむほど腐っている、またはシロアリの巣が確認された場合は、構造的な欠陥(瑕疵)につながる重大な事態です。この段階でのDIYによる対処は不可能です。
症状から当面の水被害を最小化(室内側):養生・受け皿・防滴動線・漏電ブレーカー確認

雨漏りによる被害の多くは、雨水が建物内部に浸入し、断熱材の劣化、カビの発生、そして最終的にはシロアリ被害という二次被害を引き起こすことです。この二次被害を最小限に抑えるため、室内側の対応を迅速に行います。
室内養生と受け皿の設置
漏水が確認されたら、まず水が落ちてくる真下に受け皿(バケツや深めの容器)を置きます。
- ・水はね対策:水滴が飛び散るのを防ぐため、受け皿の底にタオルや雑巾を敷き詰めます。
- ・養生と吸水:漏水箇所の下の床や家具を保護するため、養生シートやビニールを広げます。水の広がりを制限するために、濡れた部分の周囲に吸水タオルや新聞紙を配置します。
防滴動線の確保と濡れ拡大の回避
雨水は、天井裏や壁内を通って予期せぬ場所から出てくることが多いです。浸入箇所は必ずしも真上とは限りません。水平方向に1m以上離れた場所が浸入箇所であった事例も報告されています。
水が流れる経路を予測し、水が集中して流れてくる場所(例えば、天井のシミの中心)から、安全な場所(受け皿)へと水を導く防滴動線を、ビニールシートやタオルを使って確保します。これにより、家具や電気設備への被害拡大を防ぎます。
漏電ブレーカーの確認(電気設備の安全確保)
雨水が電気配線やコンセント、照明器具の近くを濡らしている場合は、感電や火災のリスクがあります。
- ・分電盤の確認:漏水箇所に最も近い回路のブレーカー(またはメインブレーカー)が落ちていないか確認します。
- ・電源オフ:漏水箇所周辺の電気器具の使用を中止し、該当するブレーカーをオフにします。これにより、電気火災や感電事故を未然に防ぎます。
30分でできる応急処置キット:必須工具・資材(ブルーシート/土のう/防水テープ/シーリング/タッカー等)

応急処置は、緊急性の高い状況で最小限の資材を使って行うものです。以下は、戸建て所有者が常備しておくと安心な「雨漏り応急キット一式」です。
応急キット一式(早見表)
品名 | 規格/用途 | 数量(目安) | 目安価格帯 | 代替案 |
---|---|---|---|---|
ブルーシート | 厚手(#3000以上推奨)、広範囲の屋根/外壁養生用 | 1~2枚(3.6m x 5.4m) | 3,000–8,000円/枚 | 厚手のビニールシート |
土のう袋/水入りペットボトル | ブルーシートの風荷重対策(重し) | 10–20個(砂や水を入れて使用) | 500–1,500円/10枚 | レンガ、ブロック |
防水テープ | ブチルゴム系またはアクリル系、サッシ周り、小穴の仮封用。両面接着タイプ推奨。 | 1〜2巻(幅50mm以上) | 1,000–3,000円/巻 | — |
シーリング材(変成シリコーン系) | 外壁クラックや隙間の一時的な仮封用。 | 1〜2本 | 500–1,500円/本 | — |
シーリングガン | シーリング材の充填用 | 1丁 | 500–2,000円 | — |
コーキングヘラ | シーリングの仕上げ用 | 1本 | 100–500円 | — |
雑巾/バケツ/吸水シート | 室内側の吸水・受け皿用 | 複数枚/個 | 1,000–3,000円 | 古タオル、新聞紙 |
タッカー/タッカー針 | ブルーシートの仮止め(極力使用しない)、室内養生シート固定 | 1丁/1箱 | 1,500–3,000円 | 養生テープ(屋外部はNG) |
ビニールひも/ロープ | ブルーシート固定・結束用 | 1巻(20m程度) | 500–1,000円 | — |
DIY資材選定の注意点
防水テープの選択と使用:
サッシ周りや貫通部には、水蒸気を通しにくい両面接着タイプの防水テープや、ブチルゴム系のテープを使用します。防水テープを貼る際は、シワが残らないようにローラーなどでしっかり押さえつけ、毛細管現象を物理的に防ぐことが基本です。
シーリング材の特性:
シーリング材は、雨水の侵入を防ぐ水密性・気密性と、地震や温度変化による建物の動きに追従する耐久性が求められます。応急処置では、多用途で耐久性の高い変成シリコーン系が推奨されますが、濡れた下地や剥離しやすい箇所への安易な使用は、かえって雨漏りの原因特定を困難にするため、広範囲の使用は避けてください。
タッカー(仮止め)の限界:
タッカー(ホッチキスのような釘)は、防水下葺き材(アスファルトルーフィングなど)を固定するために使用されますが、針穴から雨水が浸入するリスクがあります。タッカーの使用は、室内養生の仮止めや、風で飛ばされないための最低限の固定にとどめ、屋根の防水層を貫通するような安易な使用は避けるべきです。
屋根外部の一時防水:ブルーシート固定の正解(重ね代・棟越え・風荷重対策・縛り方)
ブルーシートによる応急処置は、屋根全体を覆い、水の浸入を防ぐ最も効果的な方法ですが、安全を確保した上で行う必要があります。特に屋根では、水の流れの原則を理解することが重要です。
水の流れの原則の理解
防水対策の基本は、水を「浸入させない(一次防水)」ことと、「浸入した場合に速やかに外部へ排出させる(二次防水)」ことです。
水の流れは自然の法則に従い、上から下に流れます。ブルーシートを敷く際も、水が流れる方向に対して下側から上側に向かって重ね代を確保し、水の流れに逆らって貼ることがないようにします。
ブルーシート固定手順図(テキスト図)
ブルーシートを屋根に設置する際は、風による影響を最小限に抑え、水の流れを妨げないように細心の注意を払います。
- 1. 風上始動:強風対策のため、風が当たる方向(風上)から固定作業を始めます。
- 2. 重ね代の確保:シートの重ね代は、縦方向・横方向ともに300mm以上を確保し、水の流れの方向(下から上)に逆らって重ねます。
- 3. 棟越え:屋根の棟をまたいでシートをかけることで、シートの端が風に煽られるのを防ぎ、雨水の浸入リスクを減らします。
- 4. 風荷重対策:シートの周囲と中央に土のう袋(または水入りペットボトル)を重しとして配置し、風でシートが捲れないようにします。
- 5. 結束:土のうや屋根の構造体(瓦の下など)にロープやひもでブルーシートのハトメをしっかりと固定します。既存の防水層や瓦を傷つけないように注意します。
応急費相場(ブルーシート応急):ブルーシート応急(1〜2面・1~2週間想定)の相場は、材料費と簡易設置を含めて2–8万円が目安となります(地域差あり)。
外壁・サッシまわりの一時止水:養生テープのNG/増し打ちと打ち替えの違い/排水確保

外壁やサッシ(窓枠)周りは、雨漏りが多発する「危険な部位」の一つです。
養生テープのNGと正しい仮封
外壁の目地やサッシ周りの隙間を一時的に塞ぐために、防水テープやシーリング材を使用します。
重要なNG行為:
アルミテープや粘着力が強すぎるテープを、外壁やサッシに直接長期間貼るのは避けてください。剥がす際に外壁の塗膜や下地を傷つけたり、粘着剤が残ったりする可能性があります。また、テープのシワから水が浸入し、毛細管現象によって内部に水が広がる原因にもなります。
正しい仮封の考え方:
サッシ下枠や庇(ひさし)の周りなど、水が流れやすく溜まりやすい箇所は要注意です。特にサッシ下枠では、本来、捨てフェルト(防水紙)などを先に施工し、その上からサッシを取り付け、防水テープが下地に密着するように押さえる必要があります。応急処置を行う際も、水が溜まらないように、水の流れを上から下へ導くことを意識してテープを貼ります。
シーリングの「増し打ち」と「打ち替え」の違い
シーリング材(コーキング)は、外壁材やサッシの動き(ムーブメント)に追従し、水密性・気密性を確保するために重要な材料です。
用語 | 定義と防水上の意味 | 推奨されるジョイント |
---|---|---|
打ち替え | 古いシーリング材を完全に除去し、新しい材料を充填する。防水性能を回復させる本格的な工法。 | ノンワーキングジョイント |
増し打ち | 古いシーリング材の上から、新しい材料を重ねて充填する。あくまで簡易的な工法。 | ワーキングジョイント(2面接着) |
シーリングの接着原則(2面接着と3面接着):
・ワーキングジョイント:サッシ周りなど、部材の動きが予想される箇所。建物の揺れや伸縮に追従させるため、シーリング材が目地底に接着しないようにバックアップ材やボンドブレーカーを使い、目地の両サイドのみに接着させる「2面接着」が基本です。
・ノンワーキングジョイント:コンクリートの打ち継ぎ目など、部材の動きがほとんどない箇所。水の浸入経路を完全に遮断するため、目地底も含めた「3面接着」とします。
応急処置における注意:
DIYでシーリングを施す場合、既存のシーリングの上に「増し打ち」をしがちですが、既存のシーリングが劣化している場合、防水効果は期待できません。
また、ワーキングジョイントで3面接着してしまうと、部材の動きに追従できずにすぐにシーリング材が破断し、そこから浸水する原因となります。応急でシーリングを使う場合は、最低限の仮封とし、本格的な補修は専門業者に任せましょう。
排水確保の重要性(二次防水)
外壁やサッシ周りの防水の基本は、外壁材(サイディングやモルタル)の裏側(二次防水層)に水が浸入しても、速やかに外部へ排出される仕組みがあることです。
外壁通気工法では、外壁材の裏側に通気層を設けることで、浸入した雨水や結露水を排出し、建物の耐久性を向上させています。
応急処置で防水テープやシーリングを使用する際、外壁下端や、サッシ下部に設けられた排水用の隙間(縁切り)を決して塞がないように注意してください。これらの隙間を塞ぐと、内部に水が溜まり、腐朽やシロアリ被害(二次被害)を促進するリスクがあります。
ベランダ・バルコニーの応急:ドレン清掃・立上りクラックの仮封・通気確保の注意

バルコニー(ベランダ)は、構造上、雨漏りリスクが非常に高い部位の一つであり、雨漏りトラブルの頻発箇所として知られています。
ドレン清掃(排水口の詰まり解消)
フラットルーフ(陸屋根)やバルコニーの雨漏り原因として最も多いのが、排水ドレン(排水口)の詰まりです。落ち葉やゴミ、砂などが排水口を完全に塞いでしまうと、バルコニーの床面がプール状になり、防水層や笠木からの浸水を招きます。
・迅速な対応:まず、ドレン周辺の落ち葉やゴミを取り除き、排水を確保します。
・オーバーフロー管の確認:ドレンが詰まった場合に備えて、オーバーフロー管(通常、屋外に水を排出する)が設置されているかを確認し、それが詰まっていないか確認します。
ドレン周りのパイプのつなぎ目からの漏水事例も多いため、清掃後も継続的に水が浸入していないか観察が必要です。
笠木・立上りクラックの仮封
バルコニーの笠木(手すり壁の頂上部)や、床面と立ち上がりの取り合い部分も雨漏りの弱点です。
・笠木の釘穴:笠木の固定に上から釘やビス(特にイルミネーション用など)が打たれている場合、そこが水の浸入経路になっていることが多いです。釘頭をシーリング材で仮封する応急処置は有効ですが、シーリングの耐久性は5〜10年程度であり、長期的な防水は期待できません。
・立上りクラック:防水層の立上り部分(床面から壁への立ち上がり)にひび割れ(クラック)がある場合は、シーリング材で一時的に仮封します。ただし、FRP防水などの場合は、下地の動きによりクラックが発生しやすいため、応急処置後は速やかに専門業者に依頼してください。
通気確保の注意(笠木・手すり壁)
バルコニーの手すり壁に風通し用の穴やスリットが設けられている場合があります。これは内部の湿気を排出するために重要ですが、強風や横殴りの雨の際には、そこから雨水が浸入しやすい箇所になります。
応急処置として、一時的に通気口を塞いでしまうと、内部の湿気が溜まり、結露や腐朽、シロアリ被害(木造の場合)を促進する可能性があります。通気は建物の耐久性向上に大きく貢献する要素であり、応急で塞ぐ場合も、内部に水が溜まらない構造であるか、または雨が止んだら速やかに開放することが求められます。
原因特定のための記録術:漏れ位置メモ・写真/動画・雨量/風向・濡れ拡大の時系列
雨漏りトラブルが発生した場合、後の業者との交渉、原因特定、および火災保険申請のために、詳細な証跡を記録することが極めて重要です。
漏れ位置と症状の正確な記録
雨漏りの原因特定は非常に難しい作業です。専門家でも散水試験などを実施して特定します。DIYで応急処置を行う場合でも、症状を正確に記録することが、後の調査の助けになります。
記録項目 | 記録すべき内容 |
---|---|
漏れ位置/部位 | 室内(天井、壁、床)のどのあたりから漏れているか。被害部位図を作成し、部位(屋根、外壁、サッシ、バルコニーなど)を特定します。 |
症状 | 水滴の頻度(ポタポタ、チョロチョロ)、水の量、シミや濡れの大きさ、カビ・変色などの有無。 |
時系列 | いつ(年月日、時刻)雨漏りが始まったか。雨が降り始めてからどれくらいで漏れ始めたか。時間が経つにつれて濡れの範囲がどう拡大したか(濡れ拡大の時系列)。 |
環境条件 | 雨量、風向(特に強風や横殴りの雨の場合)、風の強さ。台風など特定の降雨イベントとの関連。 |
写真・動画による証拠(被害写真と施工証跡)
デジタルカメラやスマートフォンで、以下の証拠を複数枚撮影または動画で記録します。
- 1. 被害写真(室内):濡れた天井や壁、受け皿に溜まった水の量、家具や床の被害状況を鮮明に撮影します。
- 2. 被害写真(外部):外部のひび割れ、シーリングの劣化、サッシ周りの隙間など、雨水の浸入が疑われる部位を接写で撮影します。
- 3. 応急処置の記録:ブルーシートや防水テープを貼る前の状態、施工中の様子、施工後の状態を記録します。
- 4. 降雨データ:可能であれば、気象庁や地域の降雨記録を取得し、被害発生時の状況と関連づけます。
保険申請用 証跡リスト
専門業者に切り替える際、または火災保険を申請する際に必要な証跡は以下の通りです。
保険申請用 証跡リスト | 取得・確認状況 |
---|---|
被害写真(室内/外部) | □ 濡れ、シミ、カビ、構造材の腐朽の記録 |
応急処置の領収書 | □ ブルーシート、防水テープなどの購入記録 |
降雨データ | □ 被害発生時の雨量/風速データ |
原因特定報告(業者) | □ 浸入経路や原因を特定したプロの報告書 |
専門業者へ切り替える判断基準:再発回数・浸入量・構造/下地腐朽疑い・電気/断熱被害・足場が必要な場合

応急処置で一時的に水が止まったとしても、それは根本的な解決にはなっていません。雨漏りの根源は設計・施工時の雨仕舞いの不備や構造的な欠陥にあることが多いため、専門的な調査と修理が必要です。
以下の切替条件に該当する場合、DIYを中止し、速やかに信頼できる専門業者(建築家、瑕疵対応に実績のある工務店、JIAの建築相談室など)に相談してください。
判断フローチャート(切替条件)
症状→応急→観察→切替条件 | 専門業者へ依頼 |
---|---|
(1)満水浸入:短時間で受け皿が満水になるほどの大量浸水がある | 直ちに依頼 |
(2)構造/下地腐朽疑い:木材の変色、カビ、またはシロアリ被害(二次被害)が発見された | 直ちに依頼 |
(3)配線付近浸水:電気配線や分電盤の近くで浸水が続いている | 直ちに依頼 |
(4)2回以上再発:応急処置や簡易補修を行ったにも関わらず、雨漏りが2回以上再発した | 優先的に依頼 |
(5)高所/足場が必要:原因箇所が2階以上の高所や、屋根など足場なしで作業できない場所にある | 優先的に依頼 |
(6)浸入経路が不明:散水試験なしで浸入経路の特定が困難である | 調査依頼を検討 |
(7)断熱材/内装の被害拡大:断熱材や壁内部の損傷が広範囲に及んでいる | 調査依頼を検討 |
構造的な欠陥とシロアリ被害
雨漏りが続くことで、建物の構造体を湿潤状態に保ち、木材の腐朽を招き、シロアリが繁殖するリスクが高まります。シロアリ被害は、木部だけでなく断熱材、電線、ビニールなど有機物以外にも及ぶ可能性があり、日本全体のシロアリ被害金額は火災による被害金額に匹敵するとも言われています。
シロアリ被害が疑われる場合(床下が湿っている、木材が食い荒らされているなど)は、建物の基本的な安全性(構造耐力)に関わるため、専門業者による徹底的な駆除と構造補強が必要となります。
足場の必要性
2階以上の高所にあるサッシ周りや、軒の出ていない屋根(軒ゼロ住宅)、急勾配の屋根などは、点検や補修に足場が必要になります。
足場の設置はコストがかかりますが、安全性の確保と、同時に外壁のひび割れ補修など他の劣化箇所を直す機会と捉えるべきです。足場が必要な規模の修理は、DIYの範疇を超えています。
費用・見積・保険の要点:応急費相場/見積の分解(足場/下地/材料/手間)/火災保険の可否と申請のコツ

専門業者に依頼する際は、費用や見積内容の妥当性を冷静に判断することが必要です。
応急処置費用と散水試験の相場
緊急で業者に依頼した際の応急処置費用(材料+簡易設置)や、原因特定に必要な調査費用の目安は以下の通りです。
項目 | 相場と目安(地域差あり) | 備考 |
---|---|---|
室内養生・吸水 | 0.5–2万円 | DIYで代替可能。 |
ブルーシート応急(1〜2面・1~2週間想定) | 2–8万円 | 材料+簡易設置。 |
サッシ周り仮止水 | 0.5–2万円/箇所 | シーリングや防水テープによる仮封。 |
ドレン清掃・一時防水 | 1–3万円 | 詰まり解消と一時的な防水。 |
散水試験 | 2–6万円(記録付き) | 原因特定に不可欠な調査。 |
散水試験の重要性:
雨漏りの原因特定は困難な場合が多く、散水試験は最も確実な特定方法です。特に再発している場合や、浸入箇所が水平方向にずれている場合には、正確な原因特定のために必須です。
見積の分解とチェックリスト
業者から提示される見積書は、工事内容や数量の根拠が不明瞭な「一式」表記が多いことがあります。透明性を確保するため、「一式」を分解し、詳細な内訳(数量、単価、材料、手間)を確認することが重要です。
見積チェックリスト | 確認事項 | 根拠となる専門知識 |
---|---|---|
「一式」の分解 | 足場代、下地補修(腐朽木材の交換など)、防水材、仕上げ材(瓦、サイディングなど)、手間(工賃)が具体的に分解されているか。 | 見積書の透明性 |
数量根拠 | 各項目(例:シーリング材m、防水シート㎡)の数量に根拠があるか。図面や現場写真で確認できるか。 | 数量の明確化 |
保証内容 | 補修後の保証期間、保証対象部位、再発時の対応(無償対応の有無)が明記されているか。 | 瑕疵担保責任 |
散水試験の有無 | 調査段階または補修後に散水試験を実施する予定があるか。その費用が計上されているか。 | 原因特定の確実性 |
防水工法 | 一次防水材(仕上げ材)だけでなく、二次防水層(下葺き材、通気層)の適切な処置が計画されているか。 | 雨仕舞いの基本原則 |
火災保険の可否と申請のコツ
雨漏りの修理費用を火災保険で賄えるかどうかは、原因が「建物の欠陥(瑕疵)」か「自然災害」かによって大きく分かれます。
・瑕疵担保責任:新築住宅の場合、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については、引き渡しから10年間は業者の瑕疵担保責任が適用されます。この期間内の欠陥による雨漏りは、基本的には火災保険ではなく、業者に無償補修または損害賠償を請求することになります。
・自然災害(風災・雪災など):経年劣化ではなく、台風や積雪などの突発的な自然災害によって屋根や外壁が破損し雨漏りが発生した場合は、火災保険(風災・雪災補償)の対象となる可能性があります。
申請のコツ:
保険申請を行う際は、自然災害を原因とする損害であることを示す証拠を揃えることが重要です。
・被害写真:被害状況を詳細に記録します。
・降雨データ:被害発生時が台風や強風時であったことを証明できる降雨データや気象情報を添えます。
・応急処置の領収書:緊急で支出した応急処置費用も請求対象となる場合があります。
ただし、瑕疵が放置され、結果的に被害が拡大した場合は、保険適用外となるリスクがあります。速やかに専門家の診断を受けることが、保険適用の可否に関わらず重要です。