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足場費を抑える基本戦略

足場の上で仕事をしている作業員

屋根や外壁、その他高所の修理を行う際に、安全確保と作業効率のために足場(仮設)の設置は必須となります。

この足場費用は数十万円から数百万円に及ぶこともあり、工事費用全体の大きな割合を占めます。

足場代を抑えるための基本戦略は、「同時化と適正工程による再足場防止」です。

足場費用を抑える4つの基本戦略

  • 1. 同時化(工事の集約):足場が必要な複数の工事(屋根、外壁、付帯部、ベランダ防水など)をまとめて同時期に実施します。
  • 2. 再利用:一度組んだ足場を最大限に活用し、他の工事業者(例えば、太陽光パネル業者など)との連携を図ります。
  • 3. 最短期間:足場設置期間を短縮することで、レンタル費用を削減します(ただし、品質確保のために無理な短縮は避けるべきです)。
  • 4. 品質担保(再発防止):最初に雨漏りの真因を徹底的に突き止め、適切な修理手順を踏むことで、数年後の再発による足場再設置(ペナルティ)を防ぎ、長期的なコストを最適化します。工事金額5万円あたり1日以上の時間をかけて検討することが推奨されています。

足場が必要な作業と不要な作業の切り分け

◯と✗

建物の高所部分での作業や、広範囲に及ぶ外装材の施工・交換には、労働安全衛生法に基づき作業者の安全を確保するための足場設置が原則必要です。

足場が原則必要な主な作業

  • 外壁塗装・張り替え・カバー工法:外壁全面の洗浄(高圧洗浄)や塗装、サイディングの張り替えやカバー工法。
  • 屋根の葺き替え・カバー工法:屋根全面にわたる作業。
  • シーリングの打ち替え・増し打ち:窓サッシ周りや外壁目地のシーリングの交換・補修。
  • 付帯部の交換・補修:
      ・雨樋交換/補修:軒樋や竪樋の交換、勾配の確認と調整。
      ・棟・谷・軒先板金の交換/補修:屋根の頂部(棟)や水の集まる谷部の板金交換。
      ・破風・軒天の塗装/補修。
  • ベランダ・バルコニーの防水工事(改修):パラペットや笠木まわり。
  • 天窓(トップライト)交換・補修:屋根に穴を開ける部位であり、ルーフィングの立ち上がり処理など、緻密な防水工事が必要。
  • 貫通部・付属設備の設置/撤去:太陽光パネルの設置や撤去、使用していないアナログアンテナの撤去、配管貫通部の防水処理。

足場を伴わない作業の限界

部分的な雨漏り補修(例:開口部周りのシーリングの一部補修)や、低所の点検などは足場なしでも可能ですが、高所での作業は危険を伴い、無理な作業は品質低下や再発リスクに直結します。

同時工事の定石と順番

複数の工事を同時に行う場合、その適切な段取り(工程順序)が、雨漏りの再発を防ぎ、長期的な品質を確保する鍵となります。特に、防水(雨仕舞い)に関する工程は、後からやり直しがきかないため、慎重に行う必要があります。

施工の定石と流れ(雨漏り修理を優先)

雨漏り修理を含む大規模な外装リフォームの基本的な流れは、「水の浸入経路を完全に断つこと」を最優先とし、上から下へ、内部から外部へと進めます。

原因究明と下地補修(内部処理)

  • 散水調査:雨漏りの浸入箇所を特定します(これがなければ修理はできません)。
  • 下地補修:雨漏りによって腐食した野地板や通し柱などの構造材を交換・補強します。

一次防水・二次防水(雨仕舞い)の施工

  • ルーフィング(下葺材)交換:屋根材を剥がし、二次防水であるルーフィングを規定の重ね代で確実に施工します。天窓や貫通部、谷 の防水層の立ち上がり処理もこの段階で行います。
  • 外壁防水シートの連続性:屋根のルーフィングと外壁の透湿防水シートを連続させ、一体の止水ラインを形成することが重要です。

板金工事と屋根仕上げ

  • 板金(棟包、谷板金、軒先唐草など):雨仕舞い上、重要な板金部材の交換や、適切な納まり(水の上下の流れを間違えない)での施工。
  • 屋根材仕上げ:屋根材の葺き替えやカバー工法を行います。太陽光パネルの設置も、この段階で屋根材に穴を開ける前に正しい止水方法で実施されます。

外壁工事と付帯部処理

  • 高圧洗浄:屋根・外壁の塗装に先立ち、汚れやチョーキングを完全に洗い流し、乾燥させます。
  • シーリング打ち替え:塗装前(先打ち)にシーリング材を打ち替える場合は、高圧洗浄前に既存シーリングを撤去します。プライマーの塗布からシーリング充填を行い、乾燥時間を確保します。
  • 下地調整・塗装:外壁のひび割れ(クラック)や欠損の補修(下地補修)後、下塗り(下塗材は劣化した下地の水分吸収を防ぐ役割がある)、中塗り、上塗りを経て塗装を完了します。
  • 付帯部塗装・交換:雨樋、破風、軒天 などの塗装や交換を行います。

完了検査と保証

  • 散水確認:雨漏り修理が正しく完了しているか、修理後の散水試験で確認します。
  • 写真台帳と保証の確認。

季節・天候と工程計画

水面に水滴が垂れている様子

外装工事は天候に大きく左右されます。特に足場を組んで行う大規模な工事では、季節や天候を見極めた工程計画が品質と安全を担保します。

天候が工程を狂わせる要因

  • 梅雨期・多雨期:塗装作業は気温5℃以上、湿度85%以下が目安であり、湿度が高い梅雨期は塗膜の乾燥に時間を要します。また、高圧洗浄後の乾燥不足は品質不良につながるため、乾燥時間は十分確保する必要があります。
  • 台風・強風期(沿岸強風エリア):強風はメッシュシートや資材の飛散、足場の倒壊のリスクを高めます。強風が予想される場合は、工程を中断する必要があります。特に沿岸地域では、風圧による吹き込み(逆水)に強い防水仕様 や、笠木と外壁の取り合い部などの二次防水の強化が必須です。
  • 積雪期(雪国):積雪の多い地域では、屋根上に雪が溜まると水が逃げにくくなり、立平葺きなどの金属屋根は逆水や毛細管現象による漏水事故が多発する傾向があります。雪解けを待つか、雪のない時期に工事を行うのが鉄則です。

乾燥時間の確保

塗装工程において、下塗り材は劣化した下地材が水分を吸い込むのを防ぐ役割があるため、下地の乾燥は非常に重要です。シーリング材の打ち替えは、高圧洗浄の前または、完全に乾燥させた後に行う必要があります。

見積の読み方と比較ポイント

電卓を持って費用を説明するサラリーマンのイラスト

見積もりは単なる金額ではなく、工事の品質の最大値を決定する重要な設計図です。足場費用を適正に評価するためには、その内訳を理解することが必要です。

足場費用の構成要素と読み取りポイント

足場費用は、設置・解体費用、レンタル費用、付随する安全対策費用などで構成されます。

足場種別と規模

  • 足場種別:枠組足場(安定性が高い)や単管足場(狭い場所に有利)など、建物の形状や敷地環境に応じて使用されます。
  • 延べ面積/足場面積:足場の設置面積(平米数)が適正か、図面や現場調査に基づいて算出されているかを確認します。

安全・環境対策費用

  • メッシュシート(飛散防止ネット):塗料や粉塵の飛散、資材の落下を防ぐために必須です。
  • 昇降設備(階段):職人や資材の安全な昇降のために設置されます。昇降設備がない足場は、過度なコスト削減による安全性の問題が疑われます。
  • 養生:塗料の飛び散り防止のために、窓や植栽、車両などをビニールなどで覆います。養生は隣家への配慮としても重要です。

付帯費用

  • 設置/解体費・運搬費:足場の設置と解体、資材運搬にかかる費用。
  • 近隣対応費用:事前の挨拶、騒音、粉塵、水濡れ対策。

見積比較の注意点

見積書の内容は、業者間で数量(面積やメートル数)の数え方が異なることがあり、単に総額を比較するのではなく、数量の根拠や工法の詳細を照合することが重要です。

工事内容を決める際は、工事金額5万円あたり1日以上の検討期間を設けることが、後悔しないための施主の心得です。

予算最適化の組み合わせ例:屋根カバー+雨樋交換、屋根葺き替え+外壁塗装、天窓交換+屋根葺き替え、ベランダ防水の同時施工

足場代を最小化するため、足場が共有できる工事は積極的に組み合わせるべきです。築10〜30年の住宅でよく見られる組み合わせ例と注意点を解説します。

屋根カバー工法(重ね葺き)+ 雨樋交換

  • 概要:既存の屋根材(スレート、金属など)を撤去せず、軽量な新しい屋根材(ガルバリウム鋼板、アスファルトシングルなど)を重ねて葺く工法です。廃材処分費と工期を削減できます。
  • 同時工事の利点:雨樋は耐用年数が15年〜25年程度と屋根材に近いサイクルで劣化が進むため、屋根工事の際に同時に交換することで、付帯部の足場利用コストを最適化できます。
  • 注意点:カバー工法は、下地がすでに腐食している場合や、既存屋根材が重い(瓦、セメント瓦など)場合は適用できません。下地補修が必要な場合は葺き替えを検討すべきです。

屋根葺き替え+外壁塗装(大規模改修)

  • 概要:屋根材の寿命(スレート20〜25年、金属20〜30年)や外壁の再塗装時期が重なる場合、最も一般的な組み合わせです。
  • 同時工事の利点:下地(野地板)の腐食やシロアリ被害が発見された場合、葺き替えで下地から修理し、足場があるうちに外壁塗装を行うことで、雨漏りリスクと建物寿命を大幅に改善できます。
  • シーリングの段取り:外壁の目地シーリングの打ち替え は、塗装の品質と耐久性に直結するため、屋根・外壁塗装の工程に合わせて適切なタイミング(高圧洗浄前または後)で実施します。

天窓交換+屋根葺き替え/カバー工法

  • 概要:天窓(トップライト)は屋根に開口部を設けるため、雨漏りリスクが非常に高い部位です。
  • 同時工事の利点:雨漏りの原因の45%がルーフィングの立ち上がり不足にあるなど、防水の納まりが非常に重要です。屋根材を剥がす工事(葺き替えやカバー工法)と同時に天窓の交換や周囲の防水処理(ルーフィングの立ち上げや伸縮性防水テープの施工)を行うことで、完璧な雨仕舞いを確保できます。

ベランダ防水(改修)の同時施工

  • 概要:ベランダやバルコニーの防水層(FRP防水、ウレタン防水 など)の改修は、屋根・外壁工事と同時期に行うことで、笠木や外壁との取り合い部の防水処理を確実に連続させることができます。
  • 注意点:ベランダの防水層と外壁の透湿防水シートの不連続や、笠木とパラペットの隙間からの浸水が雨漏り事故の多くを占めます。防水層の立ち上がりは床面から250mm以上、かつ外壁防水シートと連続させることが、雨仕舞いの基本です。

品質と安全の確保

足場上での作業

足場費用の削減は重要ですが、安全と品質の確保が最優先です。安全な作業環境がなければ、職人が無理な姿勢で作業することになり、結果的に手抜きや品質低下(再発リスク)につながります。

足場の安全基準(労働安全衛生法より)

  • 作業床(作業帯幅):転落を防ぐため、作業床は水平で、一定の幅(600mm以上)が確保される必要があります。
  • 手すり・つま先板:作業床の端部には、転落防止のための手すり、資材落下防止のためにつま先板を設置することが義務付けられています。
  • 親綱・安全帯:高所作業では、安全帯をかけるための親綱や設備が必要です。

品質低下を招く過度な省略のNG例

  • 足場なしの高所作業:3階建て以上の高所や急勾配の屋根、複雑な開口部周りの工事で足場を省略すると、職人が体調を崩したり、無理な体勢で作業したりすることで、施工不良や事故のリスクが高まります。
  • 片面足場での無理な作業:建物の片面のみに足場を設置し、反対側の高所作業を無理に行うことは、作業効率の低下、危険性、そして品質の均一性が失われる原因となります。
  • 養生の過度な省略:養生を省略すると、近隣の建物や車に塗料が飛散するリスクが高まり、クレームの原因となります。
  • 感電対策:アンテナや太陽光パネルなど、屋根上の付帯物がある場合は、感電防止や養生計画を立てて作業を行う必要があります。

屋根材別の段取り注意点

人差し指を立てている人

屋根材ごとに劣化のパターンや施工時の弱点が異なるため、足場を組む工事の段取りにおいても、その特性を考慮した準備が必要です。

スレート(化粧スレート)

  • 注意点:スレートは割れやすく、築10〜30年経過したスレート屋根では釘の浮きが発生している場合があります。
  • 段取り:太陽光パネルの設置や撤去を伴う場合、ねじ穴の止水方法(ルーフィングとスレートの間にシーリングを2回充填する)を厳守するよう工程表に組み込む必要があります。また、再塗装の際は、塗膜の密着性を高めるための下地補修と、毛細管現象を防ぐための縁切り を確実に行うよう監督します。

金属(縦ハゼ葺き/立平葺き)

  • 注意点:金属屋根は熱伸縮により常に動いており、勾配が緩い屋根(最小勾配10分の0.5まで)ではハゼ部からの逆水・浸水リスクが高いです。
  • 段取り:塗装の際は、下地処理(サビ止め)を徹底し、外壁塗装と同時に付帯部の板金塗装(棟包など)を行うことで、メンテナンスサイクルを合わせます。葺き替えの場合は、より軽量なガルバリウム鋼板を選択することで、耐震性の向上にもつながります。

瓦(粘土瓦、セメント瓦)

  • 注意点:瓦屋根自体は長寿命ですが、瓦を支える下葺材(ルーフィング)の劣化や、棟の漆喰の剥がれに注意が必要です。
  • 段取り:葺き替えや取り直しの際は、瓦の荷重(重いもので50kg/㎡程度)に耐える下地補強や、地震に強い工法の採用を検討します。最も重要なのは、瓦の隙間をシーリングで塞ぐと、雨水の逃げ道を塞ぎ雨漏りが悪化するため、絶対に行わないことの確認です。

防水(FRP、ウレタン、シート)

  • 注意点:陸屋根やバルコニーの防水層は、立ち上がり(規定250mm以上)や外壁との端末(取り合い)が弱点です。ウレタン防水の場合、下地からの水蒸気による膨れトラブルが発生しやすくなります。
  • 段取り:改修工事では、通気緩衝工法の採用や、改修用ドレンの設置を検討します(改修用ドレンは排水口径が小さくなるリスクを考慮する必要がある)。特に笠木廻りは、防水層をパラペット上端まで連続させることが重要です。

近隣・法規・管理:事前挨拶、騒音・粉塵・水濡れ対策、道路占用・共用部養生、ゴミ搬出計画

近所の井戸端会議の様子を人形で表現

足場を伴う外装工事は、近隣への影響が大きいため、事前の準備と管理がトラブル回避に不可欠です。

近隣対応と法規

  • 1. 事前挨拶と情報共有:工事開始前に近隣へ挨拶を行い、工事内容、期間、騒音の発生時間、車両の出入り、休憩時間などを記載した書面を配布します。
  • 2. 騒音・粉塵・水濡れ対策:高圧洗浄時の水や、外壁・屋根材の撤去時の粉塵・騒音が近隣に迷惑をかけないよう、メッシュシートや養生を徹底します。
  • 3. 道路占用・車両配置:路上に足場や資材を置く場合は、道路占用許可が必要になる場合があります。また、工事車両の駐車スペースや、道路幅員(4m以下)によっては運搬に小型車両が必要になります。工事中の洗車物移動スペースや、駐車場所を事前に確保することも重要です。

ゴミ搬出と廃棄物管理

  • 廃棄物マニフェスト:屋根材や外装材の撤去(葺き替えや張り替え)に伴う産業廃棄物の処理は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)に基づき、適正に処理する必要があります。
  • アスベスト含有建材の処理:2004年以前に製造されたスレートやサイディングなどの外装材はアスベストを含有している可能性があり、その処理は2021年4月以降、大気汚染防止法に基づき厳格な対策が義務付けられています。アスベスト含有建材の廃棄は専門業者に委託し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)にて処理の行程をチェックすることが必須です。

足場を組まない/部分足場の可否判断

足場代を削減するために、足場を組まずに高所作業車やロープアクセスを検討する場合がありますが、適用できる作業には限界があり、品質と安全性のトレードオフを理解する必要があります。

足場を組まない代替工法の適用条件と限界

手法適用条件限界とリスク
高所作業車敷地に十分なスペースがあり、車輛の設置・操作が可能な場合。作業範囲が限定的。広範囲の屋根・外壁塗装には不向き。
ロープアクセス部分的なシーリング打ち替えや、ごく小範囲の点検・補修。常に危険を伴うため、作業効率や品質の安定性に欠ける。全面改修には不向き。
部分足場軒の出が短いなど、屋根の一部補修(天窓、棟など)に限定される場合。危険な高所作業を無理に行うことで、品質低下や再発リスクが高まる。

再発リスクとのトレードオフ

  • 足場は品質確保の生命線:屋根の勾配が急な場合(例:6寸勾配以上)や3階建て以上の高所では、安全な足場がなければ、職人が細部まで確実に作業を行うことが困難になります。
  • 再発費用は足場代以上:足場を省略した結果、防水の重ね代やシーリング処理が不十分になり雨漏りが再発した場合、再度足場を組む費用と、再修理費用が発生します。結果的に、最初に足場費用を節約したメリットを大きく上回るペナルティ(費用増)となる可能性が高いです。

施工後の再発防止

禁止のジェスチャー、手のひらを見せている女性

工事が完了したからといって安心はできません。雨漏りの再発を防ぐには、適切な完了検査と長期的な保全計画が不可欠です。

完了検査の必須項目

  • 1. 散水による確認(雨漏り修理の成否判断):雨漏り修理を行った箇所は、修理後、必ず散水調査を実施し、漏水が完全に止まっていることを確認します。これにより、施工後の修理の成否と、仮説として立てていた原因箇所の特定が正しかったかが実証されます。
  • 2. 写真台帳(施工写真)の記録:見積書と照合し、工程ごとの施工状況(下地補修、ルーフィングの重ね代、防水層の立ち上がり、シーリングの施工方法、使用材料)がマニュアル通りに行われたかを、写真で記録してもらいます。特に隠れてしまう部位(ルーフィング、野地板、貫通部裏側)の写真は、保証や将来のメンテナンスに不可欠です。

保証と保全計画

  • 保証の確認:住宅瑕疵担保責任保険法に基づき、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁の下葺材や防水層)には10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。保証内容や免責事項(例:シロアリ被害は雨漏りによる水供給があると補償されにくい)を明確に確認します。
  • 保全計画(定期点検・清掃):どんなに高品質な修理をしても、シーリング材の耐用年数(10年程度)には限界があります。定期的な点検、特に雨樋や排水ドレンの清掃を欠かさないことで、次の大規模メンテナンス時期まで建物の健康を保ちます。

費用・工期レンジ

COSTと書かれた積み木と虫眼鏡

費用・工期の一般的目安

外装リフォーム全体の工期は、外壁塗装と屋根塗装の同時実施で、約10日〜15日程度が一般的です。

これに雨漏りによる下地補修や葺き替えが含まれると、さらに1〜2週間程度延長されることがあります。

足場費用や工事費用の総額は、建物の規模、屋根の勾配、選定する材料、地域(雪国、沿岸強風)によって大きく幅があります。

変動要素影響する費用・工期再足場発生のリスク(ペナルティ)
建物の高さ・勾配3階建て以上、急勾配屋根は足場の設置難易度が上がり、費用も増します。安全確保が難しくなり、施工品質が低下しやすくなります。
工法の種類カバー工法は葺き替えに比べ、廃材処理費と工期を節約できます。葺き替えが必要な下地の腐食がある場合にカバー工法を選択すると、数年後に屋根を再度剥がす必要が生じます。
同時工事の有無足場費の再設置(再足場)を防げるため、トータルコストが大幅に削減されます。わずかな雨漏りを無視して塗装のみ行い、雨漏りが再発した場合、足場設置費用がまるごと無駄になります。

費用検討の目安:工事金額が数十万円から数百万円に及ぶ場合、工事金額5万円あたり1日以上の検討を行い、急いで業者を決定しないことが、長期的なコスト最適化に繋がります。

業者選び・FAQ・まとめチェックリスト

5つの電球のイラストから光った1つの電球のイラストを選んでいる

業者選びの最終確認

  • 専門性と実績:雨漏り診断士などの専門資格を保有し、散水調査の実績と写真台帳付きの報告書を提出できる業者を選びましょう。
  • 品質への意識:塗装のみで雨漏りが止まると安易に推奨する業者や、調査をせずに修理を勧める業者は避け、原因究明を優先する業者を選びます。

業者への質問例(工程と保証の確認)

  • 1. 御社が作成された、過去の雨漏り修理の写真台帳(施工写真)を見せていただくことは可能ですか?(特にルーフィングや防水立ち上がりの写真)
  • 2. 屋根と外壁の防水層の「重ね代」や「立ち上がり」について、具体的な寸法(例:250mm以上など)を工程表に明記してもらえますか?
  • 3. シーリング材の打ち替えは、塗装の前後どちらで、どのようなタイミング(先打ち/後打ち)で行いますか?
  • 4. 修理後の散水確認(完了検査)は、工程に組み込まれていますか?
  • 5. 工事中にアスベスト含有建材(スレートなど)の廃材が出た場合、マニフェストに基づき適切に処理されますか?

Q&A(よくある質問と回答)

Q1:足場代を節約するために、雨漏り修理を焦って発注しても良いですか?
A1:いいえ、焦って発注することは避けるべきです。工事内容や業者を検討する時間(目安として工事金額5万円あたり1日以上)が短いと、工事の品質が低下し、数年後に雨漏りが再発し、再度足場を組むという、最もコストがかかる事態(ペナルティ)に陥る可能性が高いです。雨漏り修理は原因特定(散水調査)が最優先です。

Q2:屋根の雨漏り修理をする際に、他に同時にやるべき工事は何ですか?
A2:足場代を節約するためには、足場を共有できる工事を同時期に行うのが定石です。特に、外壁塗装、シーリングの打ち替え、雨樋の交換/補修、ベランダ・バルコニーの防水改修は、足場を必要とするため、屋根修理と同時に行うことが予算最適化に繋がります。

Q3:塗装工事だけで雨漏りは止まりますか?
A3:塗装工事(塗り替え)だけで雨漏りが止まることはありません。塗装は外装材の保護と美観が目的であり、雨漏りは通常、屋根材や外壁材の下にあるルーフィング(二次防水層)の不備や劣化、または雨仕舞い(水の流れを制御する構造)の設計不良が原因です。必ず散水調査で浸入経路を特定し、防水層そのものを修理する必要があります。

Q4:瓦屋根の雨漏り修理で、瓦の隙間にシーリングを充填しても大丈夫ですか?
A4:絶対にいけません。瓦屋根は、瓦の下に雨水が入る構造になっており、その下のルーフィング(二次防水)で止水しています。瓦の隙間をシーリングで埋めてしまうと、内部に入った雨水の逃げ道を塞ぎ、水が滞留してしまい、かえって雨漏りが悪化させるリスクがあります。

Q5:見積もりを比較する際に、足場費以外で確認すべき重要なポイントは何ですか?
A5:最も重要なのは、「雨漏り原因を特定するための調査費用」と「防水層に関する工法の詳細」です。
  ・防水工法の詳細:ルーフィングや防水シートの立ち上がり高さ(例:250mm以上)や重ね代 が図面や見積書に明確に記載されているか。
  ・隠ぺい部の記録:完了時に、下地補修やルーフィング施工時など、後から見えなくなる部分の写真台帳(施工写真)の提供があるかを確認してください。

まとめチェックリスト

項目確認事項
基本戦略屋根・外壁・付帯部など、足場が必要な工事を全て洗い出し、同時工事を計画したか。
品質優先原因特定(散水調査)を完了し、再発リスクの低い適切な修理工法を選択したか。
安全対策見積書にメッシュシート、昇降設備、安全帯を使用するための親綱設置が含まれているか。
工程順序「防水/雨仕舞い」の工程(ルーフィング、立ち上がり、板金)を、仕上げや塗装より前に実施する計画か。
屋根材対応屋根材ごとの弱点(スレートの釘浮き、瓦のシーリング禁止、金属の熱伸縮)を考慮した施工指示があるか。
天候対応乾燥時間を考慮し、梅雨や台風を避けた余裕のある工期が設定されているか。
見積内容足場費の内訳、工事の数量、使用材料が明確に記載されているか。
廃棄物処理アスベスト含有建材の有無を確認し、マニフェストに基づき適正に処理する計画か。
近隣配慮騒音・粉塵・水濡れ対策を含めた近隣への事前挨拶が予定されているか。
最終検査修理後の再散水確認と、隠ぺい部の写真台帳(施工写真)の提供が保証されているか。